アスペルガーのメソッド

ADHD、アスペルガーとして40年。身につけたメソッド(対策・生き方)をご紹介します。

2016年10月 最近の発達障害関連のニュースをピックアップ

はじめに

こんにちは、久しぶりの記事更新です。2016年9月から10月は、発達障害関連のニュースが多くありました。今日は、その中から6つのニュースをピックアップしてみたいと思います。

News

1

ADHD治療薬「ダソトラリン」

ADHD Diet


ADHDの治療薬コンサータとストラテラが効かない人の救世主になるか?

成人ADHD治療薬として期待の高い「ダソトラリン(dasotraline)」が最終段階の治験で有効性が確認される

  • 成人ADHD治療薬として治験フェーズⅢ(治験の最終段階)
  • 成分名:ダソトラリン
  • 開発:米サノビオン(大日本住友製薬の子会社)

ダソトラリンはノルエピネフリン・ドーパミン再取り込み阻害薬(DNRI)です。9月末に大日本住友製薬からプレスリリースがあったように、治験が最終段階(フェーズ2/3)に来ており、安全性と効果が確認されたとのこと。半減期は47~77 時間。米国ではADHDと過食症(BED)で臨床試験中です。

2018年までにADHD治療薬として、2019年には過食症治療薬としての発売を目指しています。

DNRI製剤のADHD治療薬という点でも注目できますが、DNRI製剤として既にデビューしているものとしては「ブプロピオン」があります。これは、抗うつ薬、禁煙補助薬として米国で発売されています。

参考:大日本住友製薬のプレスリリース

 

News

2

脳内免疫細胞「ミクログリア」

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発達期に、脳内免疫細胞「ミクログリア(小膠細胞)」が少ないと感覚処理に問題が生じるというマウス実験

脳内に入れない白血球の代わりに免疫細胞として活躍する「ミクログリア」に関するニュースです。生理学研究所によると、発達期に「ミクログリア」を減らしたマウスは、触覚や痛覚などの感覚処理に問題があったことを発見しました。

これまでは「ミクログリア」が多いことで発達障害を引き起こしているのではないかという研究が知られていましたが、今回のように「ミクログリア」が少ないことも問題となると「ミクログリア」の謎は深まるばかりです。

たとえば、2012年の浜松大の調査では、大人の自閉症の脳では、「ミクログリア」が過剰に働いていることが分かっています。

また、2014年のジョンズ・ホプキンス大による調査では、「ミクログリア」に炎症を起こす行動と抑える行動の2種類あることが判明。さらに、自閉症患者は「炎症を抑えるタイプのミクログリア」が活発になりすぎることで、神経細胞が正しく働かなくなることを発表していました。

ミクログリアの神秘についてはこちら(pdfファイル)。

https://www.inst-hsc.jp/rrep/pdf/361-03-01.pdf

 

News

3

簡易型脳波計

気軽に、科学的に、感覚を評価することができる時代まで、あと少し

https://www.nips.ac.jp/release/images/20160929press_1-1.jpg

帽子のように被るだけ。視覚評価用脳波計システムのモック図面

内閣府による「総合科学技術・イノベーション会議」のプロジェクトにより、「視覚評価用脳波計システム」のプロトタイプが完成したというニュースです。

「視覚評価用脳波計システム」とは何か。

これは、レンズメーカーなどが中心となり共同開発が進められている製品。もともとは、遠近両用レンズなどのように、見え心地を言葉ではうまく説明できない問題を、脳波の動きを見て客観的に評価しようと開発したものです。よく見えているのか、見えていないのか、不快か、心地よいかなどを、脳の動きとして計測します。

脳波計ですから、視覚に限らず、聴覚、触覚など五感がどのような状態なのかを客観的に調査することが可能です。それで今後、発達障害者の感覚過敏等を計測するのに役立つと期待されています。

体温計感覚で、自分の気分を測定できる日も、間近かもしれません。

また、余談ですが、ウェアラブルということもあり、バーチャル・リアリティへの応用など幅広い分野での活用が期待されています。

"緊張"や"驚き"などを検知するのも可能で、たとえばホラーゲームなどでプレイヤーの緊張感が高まったときにタイミングよくイベントを発生させることもできるとのこと。次世代VRヘッドマウントディスプレーに搭載されれば、ユーザーに合わせて演出が変化するVRコンテンツを作成できそうです

4K解像度のVR HMDの登場時期は? CEATECで見かけたVR系ガジェットをチェック:週刊VR情報局 - Engadget Japanese 

 

News

4

国内初バリアフリー映画館

東京田端に国内初の「バリアフリー映画館」がオープン。個室を完備し、全作品に字幕や音声ガイドも

Nuovo cinema Paradiso\

11月にはニュー・シネマ・パラダイスの上映も

2016年9月1日。東京の山手線「田端駅」北口徒歩5分の場所に、バリアフリーの映画館「CINEMA Chupki TABATA(シネマ・チュプキ・タバタ)」がオープンしました。クラウドファンディングなどで1,880万円の募金が集まり、映画館オープンが実現。

これまでも、月1で音声ガイド付きの映画を上映するなど、バリアフリーデーに取り組んできたシアターはありましたが、映画館そのものをバリアフリーにしたのは、おそらく国内初。

全18席(うち車いす席3席)・120インチスクリーンとハードこそ小さいですが、客席後ろに個室を用意。映画中に興奮して大声を出したり、泣いたりしがちな発達障害の子どもなら、ありがたい仕様です。

ソフト面では、邦画洋画問わず、字幕と音声ガイドがあります。ここなら、目や耳が不自由な人はもちろん、音声だけだと話の展開についていけない発達障害の人も、誘い合って映画に行くことができます。

運営はバリアフリー映画鑑賞推進団体 シティ・ライツ。水曜定休。料金は一般1,500円、シニア・学生1,000円、中学生以下500円。障害者料金の設定は無し。ホームページから予約も可能です。 https://chupki.jpn.org

 

News

5

体内時計を制御する物質

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北大が体内時計をコントロールする神経ペプチドを特定

北海道大学は9月12日体内時計(生物時計)の可視化技術を利用し、体内時計の生後発達を制御する神経ペプチドの同定に成功したことを発表しました。

睡眠覚醒リズムは脳の奥深いところにある体内時計(視交叉上核(SCN))によってコントロールされています。体内時計は1億以上の神経細胞で構成されいるのですが、1億の細胞それぞれが時計遺伝子を振動させています。それらが、互いに連絡を取り合いながら体内時計として機能しているのです。というのが、今まで分かっていたこと。

でも、1億もある神経細胞内の時計遺伝子が、どうやって互いに連絡を取り合っているのかは、解明されていませんでした。北大は、2つの神経ペプチドがその連絡に関係していることを突き止めました

この2つの神経ペプチドとは、利尿や血圧に関係する「アルギニンバソプレシン(AVP)」消化器系を制御する「血管作動性腸管ペプチド(VIP)」です。これらが、脳内の体内時計のコントロールに不可欠な神経ペプチドだということがわかりました。さらに、成長のある段階まではVIPが優位で、以後はAVPが優位になるということも発見。

北大によれば「小児の行動リズム異常や睡眠障害を伴うことの多い発達障害などの病態解明に結び付くことが期待される」ということです。

素人目に見ても、興味深いこのニュース。子どものおねしょとか、夜泣きなんか、体内時計にヒントがありそうですよね。それに、発達障害者に睡眠障害が多いのも、なんかヒントが見えそう。さらに言えば、すべての細胞内にも時計遺伝子は組み込まれているわけで、現在は未解明ながらも、実は脳内の親時計が全身の時計遺伝子に司令を出しているとか(妄想)… そんなことにもなってきそうで、勝手にワクワクしています。

 

News

6

自閉症と遺伝子の関係

genome

九大の自閉症の発症メカニズを解明に疑問符

今度は九大の発表。9月18日に「自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待というセンセーショナルなプレスリリースがありました。すごい発見だとネットを随分と賑わせていました。しかし、本当にそうなのでしょうか。プレスリリースによると、

健常者ではCHD8がRESTの活性を抑えることによって正常な神経発生が行われますが、自閉症患者ではCHD8の変異によりRESTが異常活性化して神経発生が遅延することが明らかとなりました。自閉症の原因が判明したことによって、新たな治療法の開発が期待されます。自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 | 研究成果 | 九州大学(KYUSHU UNIVERSITY)

とのこと。要約すると、自閉症患者で最も変異が多いCHD8これがRESTを異常活性させ神経発達に影響する→つまり自閉症の原因が判明した→今後CHD8を人工的に上昇させるか、RESTを抑えるかのいずれかで自閉症が治療できる可能性が高い。以上。

本当にそうなのでしょうか?

毎日新聞WEB版は、この点を冷静に記事化していました。

自閉症の原因に関係すると考えられる遺伝子は数多く報告されている。特にDNAの転写などに関わる「CHD8」を持っていない人は患者で最多の約0.4%いるとの研究もある 毎日新聞-阿部周一 自閉症:発症の仕組みの一端解明 九大グループ - 毎日新聞

さすが、新聞はまだ死んでいない。

CHD8半欠損の自閉症は患者の約0.4%にも関わらず「自閉症の発症メカニズム解明」のタイトルはやりすぎ感があります。なお、CHD8半欠損の患者さんは、高頻度で自閉症に加え大頭症、腸管異常を合併していることが知られています。https://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(14)00749-1

遺伝子異常と自閉症の関連では、これまでにも東大の研究で、ヤコブセン症候群の半分にPX-RICS半欠損が認められるなどの成果があります。遺伝子の研究により、自閉症患者の治療に光が指すことを願っています。しかし、今回の九大の研究でわたしの自閉症が治る見込みは少なそうです。

おわりに

いつも話が長くてすみません。あっという間に4000文字近くになってしまいました。最近は面白いニュースが続きましたので、続編は、また近日中にアップしたいと思います。なにぶん、いち患者の感想文ですので、内容がなって無いよう的なご意見はお許しいただければ幸いです。ただ、明らかに間違っているものは、やさしく、マイルドに教えていただければ、うれしく思います。それでは、本日はこの辺で。

 

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