[あらすじ] 過集中は、集中力をコントロールできない、暴走列車のようなものなのです。でも、この集中力を自在にコントロールできるようになれば、最高級のスポーツカーのような存在に変わることだってできるのです。4つのステップがあります。
はじめに、過集中とは
一度集中していると、寝食も忘れて没頭してしまう人っていますよね。あまり度がすぎると、声をかけても、電話が鳴っても、全く聞こえていない。
それって、「過集中」かもしれません。
過集中とは「過剰に集中してしまう状況」のこと。
過集中の影響 →「病気、死の原因」
過集中は、「健康に多大な影響」を及ぼします。体の限界に気づかずに集中力が持続してしまう場合、脳は体を休ませるために、最終的に心臓や他の臓器を止める選択するかもしれません(実感として)。
これを俗に過労死と呼びます。
たとえば、世界的なミュージシャンであったプリンスは亡くなる直前、作曲活動に集中するあまり、154時間連続で睡眠をとらなかったと言われています。
せっかくの集中力も、行き過ぎると「死」や「病気」の原因に。これでは本末転倒です。
過集中の影響 → 「臭い」
集中力を発揮している間は、風呂に入らなかったり、着替えなかったり、水分が不足していたりするため、異常に臭くなり、すごい臭いを発していることすら気づきません。
過集中の影響 → 「人間関係や仕事への悪影響」
それだけではありません。過集中は人間関係や仕事に悪影響を与えます。
たとえば、ネットや仕事に過集中してしまい、家族と食事ができなくなってしまう。こうなると、家族の時間泥棒になるだけでなく、家族をイライラさせたり、コミュニケーションを取るための機会を逃したりと、人間関係を悪化させてしまいます。
仕事なら、次にやらなければいけない用事を忘れて、現在の用事に没頭しすぎてしまう。結果としてすべき仕事を完遂できなかったり、無駄な残業になったり、周りに迷惑をかけてしまうことになってしまうのです。
過集中の人には発達障害(ADHD・自閉症スペクトラム[アスペルガー症候群など])が多い。その原因とは。
プリンスは発達障害と診断されていませんが、発達障害の人に「過集中」の問題が多く見られます。
では、どうして、過集中になってしまうのでしょうか。
発達障害の過集中、3つの原因
様々な原因があるとされていますが、主に考えられる「3つの原因」について触れておきたいと思います。
1. シングルフォーカス特性
一つ目に「シングルフォーカス特性」という大きな原因があります。
発達障害(とりわけアスペルガー症候群)の人の多くは、複数の情報源を同時に処理できません。簡単に言えば、木を見て森も同時に見ることができないのです。
つまり、一つのことに注目すると、他を無視してしまう特性を持っているのです。
この特性が高いと、目の前の作業に過度に集中してしまう結果、今の自分が「疲れているのか」、「元気なのか」、「ストレスを抱えているのか」という判断すらできなくなってしまうという「自己現状の把握ができない」状態になってしまいます。
2. シングルレイヤー思考特性
2つ目の原因は「シングルレイヤー思考特性」です。
発達障害(とりわけアスペルガー症候群)の人は、同時的・重層的な思考処理が苦手です。物理的な次元、自己の身体に関わる次元、具体的な他者との関係、社会の中でも意味づけ、価値に関わる判断などを重層的(マルチレイヤー)に考えることが困難なのです。
難しく言いましたが、仕事を例に取ってみましょう。
健常者の場合、ある仕事を引き受けた場合、「期限」、「重要度」、「損得」、「他の仕事とのバランス」、「帰宅時刻」、「コスト」など様々な要素を瞬間的に処理して、引き受けた仕事にかけるパワーを決定します。
「後回しにしよう」とか「1時間で終わらせよう」などと判断します。
しかし、シングルレイヤー思考特性が高いと、そういった重層的な判断ができないため、場合によっては「面白そうだ」という単一のレイヤーで仕事に取りかかってしまうのです。
そこに、先ほどの「シングルフォーカス特性」が働きますので、ますます他の仕事(レイヤー)のことすら見えずに、没頭してしまうのです。
3.全身の過度な緊張状態
一度、過集中状態に入ってしまうと、身体のあちこちが過緊張状態になります。つまり、筋肉がガチガチになってしまい、その場からどんどん離れ辛くなってしまいます。しかも、ものすごい姿勢で作業に没頭したりします。
一方で、結果として目先の作業は「見事に」完成しても、他の作業をやる「体力が残っていません」。全身を緊張させた代償として、極度の疲労感が残っているため、ばったりと倒れてしまったりするのです。
つまり、過集中は、集中力をコントロールできない、暴走列車のようなものなのです。でも、この集中力を自在にコントロールできるようになれば、最高級のスポーツカーのような存在に変わることだってできるのです。
過集中のスイッチを切る4つのステップ
では、どうしたら、一度入った過集中のスイッチを切ることができるのでしょうか。今日はこれまで私が試してきた様々な方法の中で簡単かつ一番効果があった方法をご紹介したいと思います。全部で4ステップあります。この4つのステップをすべて行なうことが大切です。
ステップ1 決意を固める。
根性論ではありません。「自分の思い通りに過集中を解き放つという決意」を脳裏に焼き付けるためにとても大事なステップです。
その際、以下の4つのことを決意します。
- 「決めた時間が終了したら作業を必ず中断する」
- 「誰かに作業を止めるように言われたら必ず中断する」
- 「中断させられても絶対に文句を言わない」
- 「作業が完了しなくても必ず中断すること」
この4つを固く決意することです。
この決意がシングルフォーカス特性の深いところに働きかけます。そうすると、次第にこの決意が「こだわり」に変わります。
この決意は、自ら付箋に書いてPCのディスプレイなどに貼っておくと良いでしょう。
また、次にやるべき事がすでに決まっているなら、今すべき作業内容と共に付箋に書いて貼っておきましょう。
このときのコツは
「現在の作業はメール返信。次の作業は11:00〜、 50分間でプレゼン資料を作らなければならない」
といった具合に「命令調」で書くのがポイントです。とりわけアスペルガー症候群やADHDの人は暗示にかかりやすいので、自分で自分を暗示にかけるのです。
ステップ2 カウントダウンタイマーをセットする。
「タイムタイマー」をセットしましょう。
目覚ましアラームではなく、カウントダウンが大事です。
視覚的にあとどのくらい時間が残っているかを意識して作業することが時間内にやり遂げるというモチベーションにもなります。
1回に1時間以上作業をしないようにしましょう。
もし、3時間作業をする予定であれば、55分を3回に分けるなど工夫しましょう。55分作業をして5分休む。これを3回繰り返すのです。
5分休む際もカウントダウンタイマーを忘れずに。
うっかり休憩を2時間とったりしてしまいます。
なぜ、3時間続けて同じ作業をしてはいけないのでしょうか。
人にもよりますが、1時間以上身体を緊張状態にすると、後から疲れがどっと出て来るからです。
健常者の暮らしに寄り添う人生とは、雑談だったり、食事だったり、移動だったり、買い物だったり、リクリエーションだったりとやることがいっぱいなのです。そのためには、体力を温存しておかなければならないのです。
ステップ3 リラックスタッピングで身体を緩める。
仕事を中断すべき時間が来ました。どうしたら集中を切れるでしょう。
リラックタッピングをしましょう。
過集中の原因である身体の緊張を緩めるのです。やり方は簡単、身体の各部をパチパチと叩くことです。
わたしの場合は、腕、ふくらはぎ、太もも、首、ほっぺを各4回ずつ、軽くですがパチパチと音が鳴るくらいの強さで叩きます。
パチパチがだめな人は、さすったり、トントンと叩くといいかもしれません。時と場合によっては腕だけでも十分効果があります。
これは、水泳をはじめスポーツ選手が試合の直前に身体をパチパチ叩いて緊張をほぐしているところからヒントを得ました。
緊張した身体をリラックスさせる、手っ取り早い方法の一つがこのリラックスタッピングなのです。
これは偶然にして、TFTやEFTという心理療法として結果を出しているやり方でした。
より効果を出したいなら、以下の本がオススメです。非常に簡単ながら奥が深いタッピング。不安やトラウマ、過緊張に良く効きます。
ステップ4 システマのブリージングをする。
最後にシステマのブリージングをすれば、過集中状態、つまり過緊張の状態から完全に抜けることができます。
慣れてくれば、ステップ4、これだけでも過集中状態から解放できます。
システマのブリージングとは、ロシアの特殊部隊が行っている呼吸法です。極度の緊張状態の中でも身体を緊張させないようにする呼吸法なので、非常に即効性があります。
呼吸法といっても、やり方はとにかく簡単です。
わたしは、これをやるとすぐあくびが出ます。
何度もあくびをしてしまいます。つまり、身体がどんどんリラックスしていくのです。こうすると、過集中状態から抜け出せます。次の作業に移るか、ブレークタイムを取りましょう。
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おわりに
いかがでしたか? 「ADHDやアスペルガーの人に多い、過集中をプッツリ切る4つのステップ」をぜひ試してみてください。
もちろん、ADHDやアスペルガー症候群などの発達障害の方でなくとも過集中に悩んでいるならぜひこのメソッドをオススメしたいと思います。